I Can't Get Started


ICan'tGetStarted
I'm a glum one, It's explainable
I met someone unattainable
Life's a bore, the world is my oyster no more
All the papers where I lead the news
With my capers, now will spread the news
"Super Gal is punchy and losing morale!"
("Superman turns out to be flash in the pan!")

When I sell kisses at a bazaar
The wolves line up from nearby and far
With kings l've a la carted
But can't get started with you

When we first met, how you elated me
Pet, you devastated me
Yet, now you've deflated me
Till, you're my Waterloo

Though beauty columns ask my advice
Though I was "Miss America"twice
Still you've got me downhearted
'Cause I can't get started with you






ヴァーノン・デューク作曲、アイラ・ガーシュイン作詞で1935年に作られ、翌36年のレビュー「ジーグフェルド・フォリーズ1936年(Ziegfeld Follies of 1936)」で使われました。当初は曲名の末尾に「with you」が付いていましたが、最近では今の「I can't get started」だけで使われることが多いようです。それにしてもこの曲、歌詞が色々とありすぎてどれを載せようかと苦労させられました。歌う歌手によって言い回しが変わってくるのは普通よくあることなのですが、作詞をしたアイラ自身が何種類も書いたと言っているのです。最初はボブ・ホープとイブ・アーデンが歌ったオリジナル版が3番まであり、それ以外にラジオ放送用、出版社用、歌手ごとのレコーディング用と際限なく作ってしまったのだそうです。それに加えて歌手の方も自分の好きなようにあちこち変えて歌った結果、どれが決定版と言えないほどに錯綜しているのがこの曲なのです。という訳で、上に載せた歌詞は≪VERSE≫(I'm a glumlosing morale! まで)はほとんど同じですが、次の≪CHORUS≫からはスタン・ゲッツとの共演が話題になったシビル・シェパードが歌っているもの(女性版)を載せています。


落ち込んでいる原因は分かってる
手の届かない人を好きになったから
思い通りにいかない人生なんてつまらない
これまで好きに飛び跳ねていたと書いた新聞
今度はきっとこうなる
スーパーギャルもボロボロで意気消沈と
(スーパーマンも人の子であったと)


私が“バザー”でキスの投売りをするとき
近くから遠くから、狼たちが列をなす
王様と一緒に食事だってする私が
あなたを手に入れることが出来ないなんて

初めてあなたと逢ったときから夢中だった
ああ、あなたの魅力が私を圧倒する
なのにあなたはナポレオンが滅亡したほどに
私をへこませてくれた

美容欄でアドバイスだってしてる
ミス・アメリカに選ばれたことだって2回ある
でもあなたはそんな私を落ち込ませるの
あなたが思い通りになってくれないから





この曲の邦題は「言い出しかねて」となっています。何とも奥ゆかしくて曲想的にもピッタリだと思っていましたが、実はこれが誤訳であると分かった時はショックでした。もっとドライなんですね、あちらの方は。日本人みたいに(私みたいに?)言い出そうかどうしようかなんて迷う前にもうアクションが先に起きていて、その結果が「ダメだった」という曲なんですからまったく正反対ではありませんか。ラブソングとして定着してしているこの優しいメロディーは、これから先へのドキドキ感よりすでに過去形となった失恋の痛みを歌ったものだったんですね。きっとレビューではそのような状況で歌われたのでしょう。上記のボブ・ホープ、イブ・アーデンのボーカルから始まってバニー・ベリガンのトランペットがヒットした時からスタンダードの地位を確立したと言えるかも知れません。その後はマキシン・サリバン、ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、アニタ・オデイ、カーメン・マクレエ、テディ・キング、ローズマリー・クルーニー、バリー・マニロウシビル・シェパードなど数多くの歌手に歌われてきました。インストでもデューク・エリントン、ジョニー・ホッジスレスター・ヤング、アート・ブレイキー、リー・コニッツ、オスカー・ピーターソン、スタン・ゲッツ、アート・ファーマー、クリフォード・ブラウン、ソニー・ロリンズ、スティーブ・キューンデヴィッド・マシューズなど大勢のミュージシャンが名演を繰り広げています。




9月30日の読売新聞夕刊にこんなコラムが載っていました。タイトルが「日本男子!なぜ告白(コク)らない」という明治大学の諸富祥彦教授が寄せた一文です。

「ある授業で、いま彼氏彼女のいる男女に学生たちがアンケートをとった。『告白した(コクった)のはどっちから?』 さすがにキメの告白は男からだろう、という私の予断は見事に裏切られた。カップルの6割強は女の子からの告白が実ったものだった。しかし同じ調査では、8割強の女の子が『告白は相手からしてほしい』と答えている。つまり『男の子には、いろいろわがままを聞いてほしいし、やさしくしてほしいけど、告白など、ここ一番!って時は、ビシッとリードしてほしい。けれどそうしてくれないから、結局自分がリードするしかないの』というのが、今どきの女の子の現実らしいのだ。男の子の言い分はどうだろう。なぜ自分から告白(コク)らないの?とたずねてみた。『だってぇ、好きな子に告白して断られたら、自分がすごく傷つくじゃないですかぁ。それって、こわくないですか?』」

この調査結果について、諸富教授は「たとえ落とせる可能性は低くても、ほれた女を口説きもしない男は、男と言えない。四十男のこんな思いは、もはや時代の遺物でしかないのか」と憤り嘆いておられます。そして最後に「傷つきを恐れ、回避したいがゆえに、好きな女の子を口説くことができず、社会からも身を引く若者たち。「自然体」と評価できなくもないが、『物足りなくて』と不満をもらし、結婚をためらう女の子の言い分もわからなくない。日本の若者の<男性力>が向上しない限り、少子化問題の解決はないかも。」と結ばれています。





少子化問題にまで言及されているあたりはさすがに大学の先生と思いますが、でもこのテーマは必ずしも最近の日本人男性だけの問題ではないような気もします。建前上男から言っているだけで、実際は女の方がすべてお膳立てして男に言わせているなんていう場合だったら昔からあるような気がするし・・・。(親が決めたなんてどっちに入るんだろう?) そこまで考えると50%ぐらいでもおかしくはないのかも知れません。少し前、テレビで「電車男」というドラマが話題になりましたが、私もほとんどずっと観ていました。その中で電車男がエルメスさんに告白するシーンが印象に残っています。必死になって想いを伝えようとするシーンは可笑しいというよりむしろ感動的ですらありました。どんなにどもろうが、どんなにトチろうが、女の子は真剣に向き合って想いを伝えてくれるのを待っている、ということが伝わるシーンでした。その時の彼は、この曲では誤訳である「言い出しかねて」いる気持ちに打ち勝っている状態だったことでしょう。この気持ちは、多分日本人には共通して持っているもののように私には思えます。イタリアの男性みたいに気軽に声をかけることができる人が多くなったとしても、最後に大切な人に告白する時にはやはり「言い出しかねて」しまいそうになる気持ちと戦うことになるのではないでしょうか。

それにしても、この曲の邦題の「正解」が今のところ巷に見当たりません。ちょっと気になるところではありますが、日本人ならこのまま「言い出しかねて」でいってもいいですよね。「思い通りになりゃしない」なんてちょっとこの優雅なメロディーに似合わないと思いませんか。^ ^




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