Blue and sentimental, my dreams are blue dreams
Just won't come true dreams, I find
Blue and sentimental, I can't forget you
My heart won't let you out of my mind
It rains all the time since you said goodbye
The skies and my eyes and my heart all cry
Blue and sentimental, if you don't want me
Why do you haunt me and keep me feeling
Blue and sentimental
1938年の作品で、カウント・ベイシーとジェリー・リヴィングストンがインスト用に作曲し、9年後の1947年にマック・デヴィッドが作詞しています。この曲は特に映画やミュージカルから生まれた曲ではありませんが、当時のベイシー楽団のメンバー、ハーシャル・エバンスのテナーをフィーチャーしてヒットし、スタンダードになりました。ジェリー・リヴィングストンは1909年、デンバー生まれ。1932年にニューヨークに出てバンドのピアニストとなり、一時は自分のバンドを持つまでになりますが長続きせず解散。その後は作曲活動に専念し、楽譜出版社を作るまでになりました。作詞のマック・デヴィッドはバカラックとのコンビで有名なハル・デヴィッドのお兄さん。1950年の映画「シンデレラ」であの有名な『ビビディ・バビディ・ブー』の作詞をしたり、どちらかというと映画の中の作品が多いようです。
カウント・ベイシーの演奏はゆっくりしたテンポで、所謂”聴かせる曲”となっています。通常1コーラス32小節の曲が多い中、この曲は半分の16小節が基本形でエンディングに2小節ついて1コーラス18小節となっています。聴かせどころのソロをテナーが1コーラスやった後、ピアノ→ペット→クラと1ーラスやり、3コーラス目は全員で12小節やった後またテナーが最後を締めるというパターンで演奏することが多いようです。しかしベーシーに限らず、この曲に限ってはテナー・ソロでメロディーというのが一番オーソドックスのような気がします。アイク・ケベック、ドン・バイアス、イリノイ・ジャケイといった渋いテナー奏者が朗々と吹いていますが、まさにテナーのための教則本のような、これほどテナーにピッタリの曲はないのではないかと思うくらいです。かと思えばフィル・ウッズはアルトをクラリネットに持ち替えてこの曲を取り上げています。クラで聴いてもまた違った味わいがあって、これがまた実にいい。何となく『Memories of you』の胸がキュンとなる感じを思い出してしまいます。その他、ピアノのエリス・ラーキンス、エロル・ガーナー、ビッグ・バンドではベイシーのほかトミー・ドーシー、ベニー・グッドマンなどの演奏があります。ボーカルではジャズ・コーラスの草分け的な存在であるミルス・ブラザースがベイシー楽団の伴奏で歌っているのが有名です。他にはラーリーン・ハンター、ナットキング・コール、トニー・ベネット、メル・トーメ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ボーンなどが歌っていますが、いずれもビッグバンドをバックに歌っているものが多いです。
私とこの曲との出会いは比較的最近のことです。2年程前、音楽の師匠である高橋先生がサッチモ祭に出演されるということで、東京・恵比寿の恵比寿麦酒記念館に行ったときのことです。いくつものバンドが交替で演奏するのですが、途中20分ほど休憩時間がありました。その間の出来事です。これまで浴衣姿で司会を務めていた女性がテナー・サックスを手にして前へ現れました。そして突然吹き始めたのがこの曲なのです。あれれ、司会の人がそんなに上手く吹けちゃっていいの?って感じで、聴き入ってしまいました。明るいキャラで司会を務めていた女性が浴衣姿のまま、ソロでジャズ演奏をしたのには驚くやら感心するやら。せっかくカメラを持っていたのに撮ろうと思ったらもう演奏は終わってしまいました。その後個別に交渉?して写真を撮らせていただき、吹いた曲が『Blue and sentimental』であることを教えていただきました。このサイトの別館<JAZZINN5'S BAR>にある「Photo Gallery」の『第24回 サッチモ祭』というアルバムに載っています。楽しい思い出になったのと同時に、素晴らしい曲を知るきっかけにもなりました。
この曲自体は失恋を歌った曲ですが、ブルージーで甘美な雰囲気を持つメロディーがなんとも素敵です。「あなたがいなくて、寂しくて、泣けてくる…」とずいぶんストレートに悲しんでいる歌詞ですが、こんなに素敵なメロディーに乗せられて聴くともうすっかり立ち直って?むしろいい思い出として楽しんでいる余裕すら感じてしまいます。そのへんが『'Round midnight』や『Left alone』と違い、時代はまさにビッグバンド全盛、スイングジャズ黄金時代ならではの曲なのでしょうね。
PHOTO PRESENTED BY 【Four seasons】
Photo material website
http://sora.mods.jp/