Cheek to Cheek
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Heaven, I'm in Heaven
And my heart beats so that I can hardly speak
And I seem to find the happiness I seek
When we're out together dancing, cheek to cheek
Heaven, I'm in Heaven
And the cares that hung around me thro' the week
Seem to vanish like a gambler's lucky streak
When we're out together dancing, cheek to cheek.
Oh! I love to climb a mountain
And to reach the highest peak
But it doesn't thrill me half as much
As dancing cheek to cheek
Oh! I love to go out fishing
In a river or a creek
But I don't enjoy it half as much
As dancing cheek to cheek.
Dance with me, I want my arms about you
The charm about you
Will carry me through
To heaven, I'm in heaven
And my heart beats so that I can hardly speak
And I seem to find the happiness I seek
When we're out together dancing cheek to cheek
アーヴィン・バーリンが1935年に作詞・作曲したナンバーで、邦題では「頬を寄せて」。フレッド・アステアとジンジャー・ロジャース主演の映画 『Top Hat/RKO』の挿入歌で、二人で踊りながらアステアが歌っています。またその3年後の映画『Alexander's Ragtime Band』にも使われました。二人とも幼少の頃からダンスの勉強を続けていたようでダンスは本格派。このペアーでこの作品以外にも『Gay Divorcee(陽気な離婚者)/コンチネンタル』など数本のダンス映画に出演しています。さて、この作品ですが、面白いエピソードが残っています。上の写真は映画のワンシーンですが、ジンジャー・ロジャースが着ているドレスはダチョウの羽でできていて、アステアと激しく踊ると彼女の衣装から細かな羽毛が嵐のように飛び散り、それがアステアの目や鼻に入ってくしゃみの連続であったそうです。リハーサルは中断し、衣装係が処置をして翌日再開したもののやはり羽毛は飛び続け、アステアは怒ってジンジャーは泣き出してしまいます。その晩衣装係は徹夜で羽を縫いこみ、次の日ようやく撮影に成功したというエピソードです。後にアステアがジンジャーをこの時のことをからかって、この曲の替え歌を作りましたが、これがまた面白いですね。
Feathers,I hate feathers
And I hate them so that I can hardly speak
And I never find the hapiness I seek
With those chicken feathers dancing cheek to cheek
― 『ジャズ詩大全8巻』(村尾陸男著) ―最近はネットで色々な動画を見ることができるようになり、この曲に関して探してみましたら映画のワンシーンで、この曲が歌われる導入部からダンスを踊り終えるまでを見られるサイトがありましたのでご紹介します。映画そのものはDVDもなさそうで見ることができないと思いますが、一部だけでもご覧いただければ雰囲気くらいは味わえるかも知れません。最初はいやいや踊り始めたジンジャーがいつしか息もぴったり合って夢中に踊り、ダンスを踊り終えるとふっと満足げな吐息を漏らすシーンが印象的です。
あぁ まるで天国にいるみたいだ
高鳴る鼓動が 言葉を奪い去ってゆく
君と頬寄せ踊っていると
探し求めていた幸せを
手に入れることが出来たような気がする
そう まるで天国にいるみたいさ
この一週間 僕にまとわりついていた悩み事が
君と一緒に頬寄せながら踊っていると
賭博師のツキみたいにあっけなく消えてしまったんだ
僕は山に登るのが好きだ
一番高い頂きを制覇するのが好き
それでも 君と頬寄せて踊ることに比べれば
半分ほどにも心はときめかない
小川や渓流での釣りも好きだけれど
やはり君と頬寄せあって踊ることに比べれば
全く味気ないものになってしまう
さあ 僕と踊ってくれないか
君を僕の腕の中に閉じ込めてしまいたい
君の艶やかさにうっとりして
僕はただただ心奪われて……
天国へ
ああ そうさ
それはまるで天国にいるみたいなんだ
めくるめくようなときめきが 言葉を奪ってゆく
そして見つけることが出来るんだ 探し求めていた幸せを
君と頬寄せて踊っているとね
translated by ryu_mama♪
といった歌詞で、今回も素敵な訳詞を ryu_mamaさんにお願いしました。この曲はヴァース部分はありませんが、「頬を寄せて」踊っているときの幸せな気持ちがコーラス部分にぎっしりと詰まっている感じがします。動画で見ても二人の見事なダンスにはうっとりとしてしまいますが、二人の息の合ったダンスはまさにその後の二人の展開を予想させるほど素晴らしいものでした。
さて、この曲についてもアメリカの代表的な作曲家の曲ということもあって、多くのミュージシャンが取り上げています。ボーカルでは、ルイ・アームストロングとエラ・フィッツ・ジェラルドの競演した「エラ・アンド・ルイ」がよく聴かれています。他にはビリー・ホリデイ、カーメン・マクレエ、ペギー・リー、メル・トーメ、サラ・ボーン、ビリー・エクスタイン、マーク・マーフィ、ジャッキー・アンド・ロイ、ミルス・ブラザーズなど。インストでは古いデイブ・ペル・オクテットのものやバイオリンジャズのステファン・グラッペリ、盲目の黒人ピアニスト、ジョージ・シアリングのほかレッド・ノーボ、バディ・リッチなどの演奏があります。
ところでこの映画の中の二人ですが、様々な紆余曲折を経て最後は結ばれるという結末のようです。最初はあんなに嫌がっていたジンジャーもアステアのリードで自分でも驚くほど夢中になってダンスを踊ってしまい、気が付くと気持までもが一つになっている自分を発見したのではないでしょうか。でもダンスもあれくらい上手に踊れると、見ていて感動を覚えるものですね。逆にいうと心が一つになるくらい息がぴったり合わないと他人に感動を与えるようなダンスは踊れないということなのでしょう。そういえばダンスの大会などを見ると、ペアーを組んでいるのは夫婦とか恋人同士とかが多いように思います。そういう意味ではスポーツの一つの分野でありながら、これほど心・技・体を同じレベルまで互いに高めていかなくてはならないダンスって、奥が深いのでしょうね。
PHOTO PRESENTED BY 【FilmFanatic.org】
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