It Don't Mean A Thing
1932年の作品。作詞:アービン・ミルズ、作曲:デューク・エリントン。
「スイングしなくちゃ、意味ないよ」という、エリントンの口癖がこの曲になったようです。
キャロル・スローンのスインギーなボーカルはこの曲にピッタリな感じがします。
It don't mean a thing if it ain't got that swing
It don't mean a thing all you gotta do is swing
It makes no difference if it's sweet or hot
Give it all the rhythm that you got
Don't mean a thing if it ain't got that swing
ジャズって、やっぱりスイングが命だよね。身体が乗ってくるって言う感じ、自然に足がリズムに合わせて動いてしまっている、そんな状態の時って、すごくハッピーな気分になってる自分がいることに気付く。あぁ、いいなーって思う。
かと思えば、静かな曲を聴いて、心が洗われるような安らかな気分になったり、優しいメロディーを聴いて心が締め付けられくらいロマンチックな思いにかられたりすることもあるよね。そんな、人に感動を与えられるジャズマンって素晴らしいと思う。
ところが、人に感動を与えることができるっていうことは素晴らしいことなんだけれども、感動を受ける側の心に比べると与える側の心というものは、多分ちっとも感動的ではないことの方が多いんじゃないかと思う。というより感動に浸るどころではないと言った方が正確かも知れない。それは演奏者が演奏する時、そういつも気持ちが乗るとは限らないからだ。時には風邪をひいていたり、二日酔いで頭がボーっとしている時だってあるかもしれない。
ではそういう時は聞く人に感動を与えることはできないのだろうか。
それがジャズという音楽の不思議な所かも知れないけど、決してそんなことはないと思うんだなあ。例えばクラシックなんかだと絶対ミストーンなんか許されないだろうと思うけど、ジャズの世界ではそれはそれほど問題にはならない。それは同じ人が同じ曲を演奏してもいつも違っているのが当たり前だからだ。そしてその時の気分、気持ちが反映された演奏がされることになる。
確かに演奏する側の心が伝わらないと、真の感動は生まれない。ではその演奏する側の心とは何だろう。それは、人間としての喜び・悲しみ・苦しみ、そういった人としての自然な感情の発露、魂の叫びだと思う。それが音霊として放たれていく時、同じ人間としての温かさとか、弱さとか、汚さとか、醜さを持った人間同志であることの共感を呼び起こすのだと思う。
だから音楽をやるからといって、高尚だとか高潔だとかの印象を持つ人がいるとしたら(特にクラシックなんかはそんなイメージが強いと思うんだけど)、それは大きな誤りなんだ思うな。現代社会の体制の中で底辺の方にいる人達だって、彼らは彼らなりに彼らの人生を必死に生きているに違いない。そういう人達の心の叫びこそ、真に我々に感動を与えるものなんだと思う。
よく麻薬に手を染めたジャズマンも多かったと言われるけど、それは彼らの人間的な弱さからくるものだったに違いない。あるいはより良い音を求めるがあまりに日常からの脱却を図ったのかも知れない。そんな苦しみ、悩みを抱えるなかで、彼らの自己表現する手段はジャズしかなかったから、時にひどい演奏となることもあれば、時に素晴らしい芸術的な演奏も生み出した。その振幅の大きさは人によりかなり違うものがあると思うけど、共通して言えることは、飾らずに、心の思いを素直にぶつけたものは感動を呼び起こすってこと。
もちろんそれなりのテクがあっての話なんだけど。逆にいえばいくらテクがよくてもそれだけじゃダメだということだよね。そういう意味では、エリントン楽団クラスになるとテク以上に味のあるメンバーぞろいで、ホント素晴らしい。さッ!この曲聴いてスイングしなきゃ、スイングする曲ないよ〜♪