Just One of Those Things
It was just one of those things
Just one of those crazy flings
One of those bells that now and then rings
Just one of those things
It was just one of those nights
Just one of those fabulous flights
A trip to the moon on gossamer wings
Just one of those things
If we'd thought a bit of the end of it
When we started painting the town
We'd have been aware that our love affair
Was too hot not to cool down
So, goodbye, dear, and amen
Here's hoping we meet now and then
It was great fun
But it was just one of those things
1935年、コール・ポーター作詞、作曲。1935年10月のミュージカル『Jubilee』のために書かれ、ジューン・ナイツとチャールズ・ウォルターが歌っています。またこのミュージカルからは、他に『ビギン・ザ・ビギン』のような名曲も生まれています。
「失恋なんかよくあること。たいしたことじゃないよ」と、別れた恋人たちの感情を描いたコール・ポーターの代表曲の一つでもあります。コール・ポーターは1893年インディアナ州ペリーで生まれ、音楽好きの母からバイオリンとピアノを習い、10歳で作曲を始めたほど才能に恵まれていました。もともとエリートの家系だったようで、初めは本人の希望とは異なるハーバード大学に入学、法律を学びますが、彼の関心はもっぱら音楽にあり、結局エール大学に転入、音楽を学ぶことになります。そのエール大学在籍中、既に300曲もの作曲をしていたそうです。パリでの兵役を経て20年代から本格的に作曲を始め、ミュージカル、映画で多数のヒット曲を生み出しています。
それはよくあることさ
狂ったように遊んだ夜
鳴り響く鐘のよう
それはよくあることなんだよ
酔いしれた夜
夢の様に空を飛んで
月まで行ったような一夜
そんなありふれた話さ
終わりのことを少しでも考えておけばよかったね
夢物語の終わりを
ぼくたちは夢中になり過ぎて
何も見えなかった
さようなら愛する君、さようなら
時々はまた会おうよ
とても楽しかったよ
全ては、たくさんある事の1つに過ぎないんだよ
といったような内容の歌ですが、歌詞が別れの曲にしては威勢がいいというかやたら明るい曲調で取り上げられることが多く、どうやら失恋した人を励ます歌のようです。よくあることなんだから、またもっと素敵な恋がきっと待っているよ、なんてずいぶんスマートというか気障というか、恋愛慣れした男の(石田純一さんみたいな?)台詞のようで、あまり好きにはなれないけれど。でもアップテンポで明るく歌いあげちゃうところがいかにもアメリカ的で、多くの歌手や演奏者から好んで取り上げられるところなんでしょうか。ステージの最後の締めにも、"勝負曲"としてよく使われている曲でもあります。
この曲、ボーカルではまずフランク・シナトラでしょう。アルバム『スイング・イージー』での盛り上がりは圧巻。その他メル・トーメ、ルイ・アームストロング、ナットキング・コール、ビリー・ホリデイ、ドリス・デイ、マキシン・サリバン、アニタ・オデイ、サラ・ボーン、エラ・フィッツジェラルド、ペギー・リー、ローズマリー・クルーニー、ジョー・スタッフォード、スウィングル・シンガーズなどなど多くの歌手が歌っています。一方インストでは、バド・パウエル、タル・ファーロウ、スタン・ゲッツ、デイヴ・ブルーベック、ソニー・クリスなど。ステファン・グラッペリのバイオリンも聴きものです。
コール・ポーターの曲はよく映画でも使われていますが、自伝映画では1946年の『昼も夜も』(ケイリー・グラント主演)と 『De-Lovely(邦題:五線譜のラブレター)』(ケビン・クライン主演)の2本があります。どちらもDVDで観ましたが、感動度?はDe-Lovelyの方がずっと上でした。どこまで真実を描いているかは別にして、妻のリンダとの夫婦愛を軸に挿入歌が盛りだくさん。ナタリー・コール、シェリル・クロウ、エルビス・コステロ、アラニアス・モリセット、ダイアナ・クラール、ロビー・ウィリアムスなど現代のトップ・アーティストのパフォーマンスを観ることができてよかった。彼が同性愛者であることは当時から知られていたようですが、『昼も夜も』の方は全くそのことに触れなかったのに対して『De-Lovely』の方は自分が同性愛者であることをリンダに告白しており、それでもポーターを愛し続ける妻を好演したアシュレー・ジャドはとても魅力的でした。この映画の中でこの『Just One of Those Things』 はダイアナ・クラールが歌っています。