Love is a Many Splendored Thing
Love is a many splendored thing,
It's the April rose that only grows in the early spring
Love is nature's way of giving a reason to be living
The golden crown that makes a man a king

Once on a high and windy hill
In the morning mist two lovers kissed
And the world stood still
Then your fingers touched my silent heart
And taught it how to sing
Yes true love's a many splendored thing


1955年、ポール・フランシシス・ウェブスター作詞、サミー・フェイン作曲の作品。同名の映画(日本では『慕情』)の主題歌で、その年のアカデミー主題歌賞を受賞しています。原題の「Love is a Many-Splendored Thing」は近代イギリスの詩人フランシス・トムスンの詩「神の御国」の一節からとられた『A Many-Splendored Thing』によるものといわれています。邦題の『慕情』は、それより前にヒットした『哀愁』や『離愁』、『旅情』のように漢字二文字の題名が流行っている中で『慕情』の名前が付けられ、当時の宣伝コピーには「最高の哀愁作」と謳われました。

サミー・フェインはユダヤ教の牧師で歌も歌っていた父親の影響を受け、音楽家への道を進みました。当時、ユダヤ系の音楽家には親が教会の歌い手だったという人はかなり多かったようです。『Over the Rainbow(虹の彼方に)』の作曲で有名なハロルド・アーレンも父親は著名な教会の歌い手だったそうで、作曲家として有名になってもずっと歌手になる夢は捨てきれずにいたということです。

サミー・フェインの作品は、『That old feeling』、『Secret Love』、『April love』、『A very precious love』、『A certain smile』などジャズからポップスにまたがって数多くあります。作詞のウェブスターも作品は多く、70本の映画に作詞してそのうち40本がヒットしているというからすごいですね。『Black coffee』、『Invitation』、『I got it bad and that ain't good』などのスタンダード曲がありますが、サミー・フェインとのコンビではこの曲の他、『Secret love』でもアカデミー賞を受賞しています。




いつもたどたどしい訳詞を四苦八苦してお届けしていましたが、今回は強力な助っ人に訳詞をお願いしました。
素敵な詩のサイトを運営されていらっしゃるryu_mama♪さんです。


恋は まばゆいほどに素敵なことであふれている
それはまるで春先にだけ溢れんばかりに咲きこぼれる
棘の無い小さな黄色いバラのようだ
恋は生きてゆく理由そのもので
一人の男を王にさえ導く 黄金の冠でもある

ある時 風の吹きすさぶ高い丘の上で
朝もやに包まれて 恋人達が唇を触れ合わせると
時が止まった
あなたの指先が 私の寡黙な魂に触れることで
その魂に歌を歌うことを教えてくれた
そう 真実の愛は 溢れんばかりの輝きに満ちている


translated by ryu_mama♪

通常、どの訳詞もApril roseを単に「4月の薔薇」としていますが、ryu_mama♪さんは『木香薔薇』(モッコウバラ)と推測され、写真も紹介いただきました。(本ページトップに掲載) 私は花のことは疎くてよく分かりませんが、写真で見るととても上品で美しい花ですよね。普通の薔薇は、だいたい5月以降から11月末頃が咲き時なのに対して、この薔薇だけが4月頃に他の薔薇達に先駆けて咲き誇るそうです。春先に輝かんばかりに咲きこぼれる甘く美しい薔薇。しかもバラ科に属していながら棘が無い蔓薔薇だからこそgolden crown にも出来るわけで、作詞のウェブスター氏は多分この「4月の薔薇」を知っていたのでしょう。 この黄金の冠を身につけた、恋の素晴らしい輝きに満ち足りた王の姿を思い浮かべたかも知れません。また初々しく瑞々しく咲きこぼれるその小さな薔薇の花こそが恋そのもののように輝 かしい存在であることを、強く感じていたのでしょう。だからこそ単にroseではなく、わざわざApril roseと表現したのではないかとryu_mama♪さんはおっしゃいます。また、この花言葉が「あなたにふわさしい人」ということだそうで、それもこの映画に合っているのかも知れませんね。

さてこの曲ですが、インストではクリフォード・ブラウンとマックス・ローチのクインテットで『アット・ベイズン・ストリート』が有名です。アップテンポで朗々と吹くクリフォードはここでも健在、映画の雰囲気とはまったく違った彼独特の世界に引きずり込まれます。他にはキース・ジャレット(『スタンダーズ・イン・ノルウェイ』)、ライアン・カイザー、ハロルド・メイバーンなどのアーティストが取り上げています。一方ボーカルではナットキング・コール、フランク・シナトラが代表格ということになるのでしょうか。その他マーク・マーフィ、ダイナ・ワシントン、サリナ・ジョーンズ、華麗なコーラスを聴かせてくれるフォー・エイセスや
レターメンなどがいます。




映画の『慕情』についてはあまりにも有名な映画ですので解説は不要かと思いますが、簡単にあらすじを。

朝鮮戦争(1950年)が起きる直前1949年の香港。混血の女医ハン・スーイン(ジェニフ ァー・ジョーンズ)は、国民政府の将軍の夫人であったが、夫は共産軍との戦いで戦死し、彼女は香港の病院で働いていた。そんなある日、ハンは、同僚に病院の理事長宅でのカクテル・パーティに誘われ、ハンがテーブルに置き忘れた扇と手袋を見つけてくれたことがきっかけで、アメリカ人の新聞記者のマーク・エリオット(ウィリアム・ホールデン)と知り合った。 二人はやがて恋に落ち、病院の裏のビクトリア港を見下ろす丘で逢瀬を重ねるが、マークにはシンガポールに妻がいたが、妻はすでに愛し合っていないのにもかかわらず、離婚を拒み、別れようとしない。それでも、ハンは「結婚は問題ではない。私たちの愛こそ大切」とマークにすべてをゆだね、二人はひたむきに恋を貫こうとする。マカオへと旅行に出掛けた二人のもとに、マークが勤める新聞社から朝鮮戦争の取材指示の電話が入った。マークは後ろ髪を引かれる思いで朝鮮半島へと旅立っていった。ハンのもとには、戦場のマークから次々と手紙が届き、ハンもせっせと返事を書いた。だが、ある日、マークが戦死したことを報じる記事が新聞に載った。ハンは一人、よろめくようにしてマークと楽しい時を過ごした思い出の丘に登り、マークの幻を追って涙を流し続ける。「死のう・・・」、だが、その思いを押し止めたのは、マークが繰り返しハンに語った理想の言葉だった。「僕の分も長く、幸せな一生を送って欲しい。僕との真実の愛を、医学を通じてたくさんの人に広めて欲しい・・・」。

監督はヘイリー・キング。国際都市香港を舞台に「国境を越えた愛」を描いた作品で、当時のハリウッドきっての美男美女、ウィリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズが主演したラブ・ロマンス映画です。この曲が随所に流れ、ラストはチャイナ・ドレスのジェファニー・ジョーンズが思い出の丘に登って還らぬ人(ウィリアム・ホールデン)の面影を追想するシーンで全世界の女性の涙を絞ったと言われるほどのヒット作になりました。








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