Smoke Gets in Your Eyes


Smoke Gets in Your Eyes
They asked me how I knew
My true love was true
I of course replied something here inside
Cannot be denied

They said someday you'll find
All who love are blind
When your heart's on fire you must realize
Smoke gets in your eyes

So I chaffed them and I gaily laughed
To think they would doubt our love
And yet today my love has gone away
I am without my love

Now laughing friends deride
Tears I cannot hide
So I smile and say when a lovely flame dies
Smoke gets in your eyes


日本では『煙が目にしみる』の題名で有名な曲。オットー・ハーバック作詞、ジェローム・カーン作曲による1933年の作品です。ミュージカル『Roberta』に使われた曲で、パリに亡命しているロシアの王女ステファニー役のタマラが歌いました。カーンは最初この曲のメロディーをラジオ番組のテーマ曲用に行進曲として書いたそうですが、番組自体が日の目を見ることが出来ず、このミュージカルで使うことにしたのです。しかし行進曲として書いたこの曲にキャストの反応は今ひとつ。そこで思い切ってテンポを遅くして雰囲気も柔らかくしたところこれがこれが功を奏し、連日大盛況となりました。 その後1933年にヒットチャートでポール・ホワイトマン楽団とバニー・ベリガンのトランペットの共演したものが1位となり6週間続きました。翌34年にはタマラの歌も3位になり、35年には映画『Roberta』でアイリン・ダンが歌い、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが踊りました。またリメイクの『Lovely to Look at』ではキャスリン・グレイソンが歌っています。また作曲家カーンの伝記映画『Till the Clouds Roll by』(1946年)でも使われています。

しかしこの曲が有名になったのは、やはり1958〜59年にプラターズのポップ・コーラスが大ヒットしてミリオンセラーとなり、リバイバルしたことによるのは間違いないでしょう。私も子供心にこの曲は記憶に残っているほどですから日本でもかなりヒットしていたと思います。

友達が本物の恋を知っているのかと聞いたとき
僕はもちろんと答えたよ
この胸の中の何かがそう言わせたんだ
友達はお前もいつかきっと恋は盲目だってことに気付くさと言う
そしてハートに火がついているときはその煙が目にしみるものだと

そんな言葉を僕は笑い飛ばしたよ
僕のこの恋を疑うなんて馬鹿げてる
でも僕の恋人はきのう去って行った
今僕はひとりぼっち

友達はそんな僕をあざけ笑うけど、僕は涙を隠せない
だから笑ってこう言おう
恋の炎が消えたときその煙が目に入ってしみるんだと


といった歌詞で、smokeは煙草の煙ではなく、恋の炎の煙ということがわかります。初めの部分の「煙が目にしみる」は友達から夢中になってるから煙が目に入って何も見えないんだねとからかいの意味で使われているのに対し、後の方は涙が出てくるのを煙のせいにして悲しい心のうちを精一杯取り繕っているようです。まさに顔で笑って心で泣いてという状態なのでしょうね。こんな曲想がプラターズのあの裏声の聞いたコーラスとピッタリ合って大ヒットに繋がったのではないでしょうか。




さて、この曲もジャズ以外で多く取り上げられる曲ですが、ジャズバンドとしてはトミー・ドーシー、グレン・ミラー、ベニー・グッドマン、アーティ・ショーなどの楽団でも取り上げられています。ボーカルではビリー・エクスタイン、ジョー・スタッフォードサラ・ボーンダイナ・ワシントン、メル・トーメ、アーサ・キット、キャロル・スローンなどの歌がよく聞かれています。インストではセロニアス・モンク、オスカー・ピーターソンクリフォード・ブラウン、エディ・ヒギンズなどがさまざまなスタイルで演奏しています。またナットキング・コールはピアニストとして歌なしのピアノを聴かせています。一方彼の弟フレディ・コールは5ホーンの洗練されたアンサンブルをバックにゆったりと歌っています。モダンでクールなニューヨーク・トリオの演奏も最高です。
ところで、先ほどこの曲は行進曲として書かれたという話をご紹介しましたが、もう一つの説としてタップ用に書かれたという話もあるのです。作詞家のハーバックの回顧談ですが、彼が作曲家カーンの原稿をたまたま見るとそこには「タップ曲」と書いてあり、長く伸ばす2分音符のところが8分音符になってあとは休止符になっていたそうです。その休止符のところこそがタップの聴かせどころというわけで、確かにもともと2拍子の曲であれば行進曲でもタップでもピッタリ合ってしまいます。でもハーバックはこの部分を短い音符ではなく長く伸ばせばいいバラードになるんじゃないかということを言ってカーンに直してもらったということです。その結果が今日のこの曲になっているとわけなのです。

まあ同じ曲をスローでやったりアップテンポでやったりということはよくあることなのですが、詞との釣り合いでいった場合、この曲はスローでよかったのかも知れません。逆に普段アップテンポで聴きなれている曲をスローで聴くとちょっとずっこけてしまうこともあります。この曲のように初めからアップで耐えられる作りになっていてスローな曲をアップで演奏すると新鮮な緊張感のようなものが生れてきて面白いと思います。他にも色々な曲がありますけど、今思いつくのは『day by day』とか『all of me』、『just frieids』などはどちらでやっても楽しめる曲ではないでしょうか。演奏する側としてはスローな曲でその人の本当の技量が分かるということが言われますが、私が昔素人バンドでやっていた頃はそこまでの技量以前の話で、速い曲は苦手(譜面に着いていけない)、スローな曲になるとホッとしたものでした。