That Old Feeling


Last night I started out happy
Lasy night my heart was so gay
Last night I found myself dancing
In my fav'rite cabaret
you were completely forgotten
Just an affair of the past
Then suddenly something happened to me
And I found my heart beating, oh, so fast

I saw you last night and got that old feeling
When you came in sight I got that old feeling
The moment that you danced by I felt a thrill
And when you caught my eyes my heart stood still

Once again I seemed to feel that old yearning
And I knew the spark of love was still burning
There'll be no new romance for me, it's foolish to start
For that old feeling is still in my heart





ルー・ブラウン作詞、サミー・フェイン作曲による1937年の作品です。1938年のファッション界を扱ったミュージカル映画 『Vogues of 1938』 の主題歌で、同年のアカデミー賞にノミネートされた曲です。映画ではヴァージニア・ヴェリルという歌手が歌っています。その後カウント・ベイシーの演奏やペギー・リーの歌がヒットしました。作曲のサミー・フェインは1902年生まれ。小さいときから教会で歌い始め、ピアノと作曲も自分で学んだようです。すでに小学校の時にはポップソングを作曲して郵便で各方面に売り込みもしたという経歴もあるそうですが、これは失敗に終わったようです。20代になってジャック・ミルズ音符出版社に専属ピアニスト兼作曲家として雇われ、その後多くの曲を作りました。有名になったものには『慕情(Love is a many splendored thing)』 『April love』などのポピュラー・ソングがあります。

≪VERSE≫
昨日の夜、いつものように陽気に始まった
お気に入りのキャバレーで楽しく踊ってた
昔の君のことなんか思いもしなかった
なのに何かが急に起きたんだ
心臓の鼓動が激しく脈打った

≪CHORUS≫
昨日君に会ったせいだよ
君の姿が目に入って 昔の気持ちがよみがえってきたんだ
君が踊りながらそばを通ったとき ドキッとしたよ
君が僕の目を見たとき 心臓が止まりそうになったんだ

昔のあの熱い思いをまた感じるよ
まだ恋の火花が燃えているんだね
もう僕には新しい恋なんかいらないし、そんなの馬鹿げている
昔の気持ちがまだそのまま心に残っているから


といった歌詞で、ヴァースから歌っている歌手はエラやメル・トーメがいますが、ほとんどはコーラスから歌っています。ミディアムテンポで歌われるのが多い曲で、あまりゆっくりだと重すぎてしまうからなんでしょうね。過去の人への愛がよみがえるときの心の想い、それは初めて会った人に惹かれるのとはまた違う新鮮さ、古くて新しい何かを感じた素直な気持ちであることをこの曲は伝えているような気がします。





この曲はスタンダードの中では比較的マイナーの部類に入るかも知れません。取り上げているアーティストもそれほど多くはないようです。私が最初にこの曲と出会ったのはチェット・ベイカーの「Chet Baker Sings」というアルバムでした。このアルバムの1曲目にこの曲が収められていて、最初にチェットのトランペットソロが流れたあとあの甘い声でややアップ・テンポ気味に歌っているのが印象的でした。こういう曲はまさにチェットにぴったりの曲というか、まさにチェットならではという気がします。女性歌手では何といっても
ダイナ・ショアでしょう。あのしっとりとした歌い方で、聴く人をこの曲の世界に誘ってくれるようです。夜中に一人でじっくり聴くにはまさにうってつけといえるでしょう。逆にエラ・フィッツジェラルドはフルバンドをバックに華やかな中にも落ち着いた雰囲気を醸し出す歌い方で、ダイナの世界とは別の魅力を引き出しています。フランク・シナトラはスローテンポでじっくりと丁寧に歌い上げ、渋い大人の魅力を発揮しています。他にもルイ・アームストロング、ヘレン・オコネル、ドリス・デイメル・トーメ、クリス・コナーなどが歌っています。インストではポール・デスモンドがジム・ホールのギターを迎えて軽快なアルトを吹いている「イージー・リビング」というアルバムが知られていると思いますが、他にはジェリー・マリガン、ズート・シムス、チック・コリア、ルー・ドナルドソンなどのアルバムもあります。




それにしてもこの曲、こうしてスタンダードになると男も女も関係なく取り上げるってあたりまえなのかも知れませんが、日本だとあんまりないですよね。最近では徳永英明さんが女性の曲をカバーしてヒットしましたが、これは珍しい方で、普通は男の歌、女の歌とはっきり分かれている気がします。この曲についてはオリジナルがどのようなシチュエーションで歌われているのか分からないので、とりあえず男言葉で訳してみましたが、もとの映画ではヴァージニア・ヴェリルという女性歌手が歌っているのですからきっと女性の歌なのかも知れません。I とYou の二人称までしか出てこないので男女のどちら側から歌っても支障はない?この曲ですが、彼・彼女などの三人称が出てきたときはどうするのでしょう。これって意外に多くて歌手によって違いますが、さりげなく変えている歌手が多いような気がします。

一例をあげると、『My foolish heart』では<His lips are much too close to mine>の部分では男性が歌うときには<Her〜>に直したりなどがあります。またスタンダードは後から詩がついた曲がかなり多く、その場合かなりその自由度?が高くて、いろいろな歌手が色々な歌詞で歌うのもまた個性の現われで面白いものだと思います。でも日本ではあまり考えられないかも知れませんね。あ、そうそう。この間テレビで1つの曲を最後まで歌詞を間違わずに歌い終えたら200万円の賞金が出るという番組を見ました。こんなのってやはり日本人の発想なんでしょうけど、そこまでいくとちょっとやり過ぎという気もしますが、逆に日本語の歌詞はちょっとした表現の違いでその言葉を選ぶときの微妙な気持ちの表れ方まで違ってくるという面もあるのではないでしょうか。それだけ日本語って繊細で美しい言葉なんだと改めて感じてしまうのでした。









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